タイトル | 3.11特別コラム① ろうそく1本あれば笑い合える |
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投稿者 | 名無しさん(ID:9358) |
投稿日 | 2016年03月07日 |
『3.11特別コラム① ろうそく1本あれば笑い合える』 3月11日は、風俗で遊びにくい日です。 何年経っても遊びにくいのは『相手が災害に巻き込まれた人かもしれない』ってことを、意識せずにはいられないからなんだろうね。 いつもは考えなしに定番の出身地トークをしていた人たちも、おそらくこの日はあえて聞かないようにするんじゃないかな? 震災から今年で5年になりますが、未だに繊細な話題であることに変わりありません。 自分は勇気がないので、きっとその話題から避けたいんだと思います。 どう考えたって、自分のような軽薄な人間には気の利いた言葉や対応なんてできるわけがない。 だから避ける。 話をした後になって、もっと良い言葉があったんじゃないかって延々と後悔しそうだから。 しかし2011年3月当時はまさに事態の真っ只中にあり、話題を避けるってことがそもそも不可能だった。 東京では都市部と総理大臣のお膝元以外は、計画停電という『爆発したけどやっぱり原発必要だろう?大作戦』があって、町からは明かりがすっかり消えていました。 交差点の信号も消えて、町の機能は停止。 何があったか知らないけどやたらと救急車のサイレンが鳴っていた。 町は騒々しかったが、東京に来て初めて星を見た。きらきら光る星はとても綺麗だった。 マスコミが流す情報は、派手な津波の映像と、メルトダウンをひた隠しにして不毛な言い合いをするなんちゃって論客と御用知識人。 日雇い風のコスプレをした枝野作業員は 「直ちに影響はない(もうメルトダウンしてるけどね。テヘッ) 」 と見え透いた嘘をつき、人気者の蓮舫作業員は服の襟を立ててセックスアピールをする。 世の中が困難と向き合っている中テレビ東京は、有限な国民全体の財産である電波を使ってアニメを通常通り放送する。 なんというか この先についての漠然とした不安と、かつてない規模で生まれた犠牲者とその関係者への関わり方を思索して、社会全体がとても陰鬱な雰囲気になっていた。 それが2011年3月の状況でした。 そのような巨大な災害があったからといって人間の社会活動が止まるわけではありませんが、サービス業やイベント興行は自粛ブームに飲まれて売り上げが落ちていた。 もちろん風俗業界も例外ではなく、営業に様々な支障が出ていました。 東北出身の子はお店に出勤しなくなったりしたし、そもそも計画停電の影響でお店ができなくなってしまうところもありました。 流通網や交通もボロボロだったし、営業をするのも一苦労って状況でした。 私は都心に住んでいるわけではないので、住んでる町は夜中であっても計画停電で真っ暗です。 町の機能はそれでストップ。 あぁ。東京は今日も星が見えるなぁ… と自宅の窓から空を眺めていると、近所のガールズバーの女の子からメールが届きました。 その子は芸術の勉強をしていたので、ピカソちゃんとします。 ピカソちゃん『計画停電で真っ暗になっちゃうけど、ろうそくを立ててお店をオープンするから、お時間があればぜひ来てください!』 というような内容だったんですが 開店を遅らせるのではなく、ろうそくを立ててガールズバーを営業させるという荒業に興味がわいて、遊びに行くことにしました。 灯りの落ちた町は静まり返って、通りを歩く人の姿もまばらです。 皆、ライフラインの断たれた状況では家にこもるかまっすぐ帰るしかないので通行人が少ないのも当然なんですが。 さて、たどり着いたピカソちゃんの働くガールズバーの入るビルは、停電中なので外から見る限りはほとんど真っ暗です。 本当にこんな中営業してるのか…? エレベーターが止まっていたのでビルの外階段を使ってガールズバーの階まで上がります。 建物内の照明も落ちていましたが、目的のフロアに着くと、部屋の中からは女の子たちの話す声が聞こえます。 やっているのか、やはり。 意を決してお店に入ると、普段はピンク色の照明でライトアップされた店内が、この日はピカソちゃんのメールに書いてあった通りろうそくを立てて灯りの代わりにしていました。 円形のカウンターにズラリと並ぶろうそく。 ぼんやり浮かぶ女の子の顔。 このガールズバーは黒魔術の研究でもしているのだろうか? 入り口で立ち止まっていると、私に気が付いたピカソちゃんがやって来てカウンターに案内してくれます。 ピカソちゃん「来てくれたんだね! ありがとう。シコリアンさんなら計画停電でもお店に来てくれるって信じてたよ!」 シコリアン「うーん。それって喜んでいいの? 計画停電でも来るイメージってなんなの?」 ピカソちゃん「まぁまぁ、気にしない気にしない。コーラでも飲んで落ち着いて」 シコリアン「よっしゃ。飲むでー」 ピカソちゃん「おおーっ! 今日は男らしいね! かっこいいよ、いいよいいよー!」 まんまと乗せられたような気もしますが、そこを深く気にしたら負けなのです。 ピカソちゃんは元気で明るくてさっぱりした性格で、男のあしらい方が上手な人気の女の子でした。 いつもこのガールズバーの中はピンクのライトで包まれているので、ろうそくのぼんやりとした光で見る女の子の表情は普段と違った印象です。 灯りが心もとないのでお互いの顔の距離も自然と近くなり、ちょっとドキドキします。 ろうそくはお店としては苦肉の策だったわけですが、意外に楽しめました。 ろうそくは煤が出るから通常で使用することはむずかしいでしょうけど… シコリアン「ピカソちゃん、たしか実家は関西だったよね。春休み期間だし実家に帰ってもよかったんじゃないの?」 ピカソちゃん「親も向こうの友達もそう言っているけどね。でもこっちの友達も大切だから、私はここにいるよ」 シコリアン「そうかぁ。でも今だって停電してるし、実際不便じゃない?」 ピカソちゃん「でも。なんだか卑怯だよ。そうやって帰るのは。それに今日のシコリアンさんみたいに会いに来てくれる人もいるし」 シコリアン「本当に正直な性格だよね。ピカソちゃんは」 原発事故の後、地元を捨ててさっさと逃げ出したことを元妻にバラされた小沢先生に聞かせたいくらい、ピカソちゃんは人に対して正直でした。 きっと小沢先生は自分に正直なんだろうね。 そりゃ先生は剛腕政治家だもの。 十把一絡げの庶民などは、卑しいものです。 か細い炎を頼りにしてようやく語り合えるような、その程度の存在なんだから。 ゆらゆらと点滅するような光を二人でしばらく見つめていると、ピカソちゃんはふと優しい笑顔になって話しかけてきました。 ピカソちゃん「ろうそくの灯りしかないけど、これで十分だよ。いつもと同じく楽しいよ」 シコリアン「でも、楽しい話をしていいか迷うんだ。そんな話は嫌なんじゃないかって」 ピカソちゃん「私はシコリアンさんの話が聞けたら嬉しいから、聞かせて? 」 シコリアン「べつに漫談しに来た訳じゃないんだけどなぁ」 なんて言ったけど、ピカソちゃんの笑い声を聞いて、それにつられて自分も笑いながら話しているうちに自然と心が満たされていく感じがした。 どんな最悪な環境でも、笑顔になるだけで癒される。問題は何も解決していないのに、笑っている間は忘れていられる。 笑った後はほんの少しだけ気持ちが軽くなる。 最低限の灯りしかなくても、笑い合えばそれだけで生きる力になる。 幸せになるのに置かれた環境なんて関係なくて、人との関わり方次第なんだと、気付かされた。 笑顔になるって不思議だ。 どうすれば笑ってくれるか正解がないから。 3.11の後の劣悪な環境の中で、自分を強くもって『笑顔を作ろう』と接客をしていた女の子たちを尊敬する。 そんな真面目なコラムでした。 | |
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