【1回戦を終えるまで】
「どうぞどうぞ、中へ」
本業態で当然の事として、客を先に入室させる。
部屋は意外に明るい。ムーディな演出で薄暗かった照明を明るくしてもらった初回を覚えていたのかどうか。
部屋に入るや、嬢はそれまで押さえていた笑い声のボリュームを若干上げて顔を崩す。態度の微妙な変化にはリアルな手応えが感じられ、こちらも嬉しくなる。演技であるならば、なおよく出来た嬢だと言える。
重そうと言われた荷物をまずは置き、ささやかなお土産を手渡し、脱いだ上着の春コートを嬢に委ねる。吊棚のクローゼットでは寸が足りず、ハンガーは壁に引っ掛けられる。
「どうぞどうぞ、…
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