タイトル | episode56.5「ぼーちゃん風の国へ」 |
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投稿者 | 被ボディーブロー |
投稿日 | 2018年12月16日 |
『episode56.5「ぼーちゃん風の国へ」』 親譲りの未処理好きで、子供の頃から損ばかりしている。 中学時代に、クラスの女子の未処理の腋の下を見つけ、一週間ほど、腰を抜かしてしまったことがある。 ふらふらになりながら家に帰りつくと、おやじが大きな目をして女の子の未処理の腋の下を見たぐらいで腰を抜かす奴があるかと怒鳴られたので、今度は抜かさずガン見してみますと答えた。 考えると不思議だがこの事からおれは未処理好きになったのかもしれない。それからは未処理好きが高じてぼうぼう好きになり、いつしか自分のあずかり知らぬ間にぼーぼーのぼーちゃんと呼ばれるようになった。 親類のものから西洋製の髭剃りをもらい、綺麗な刃を日に翳してキラキラみせていると、友達に綺麗に光るのは光るが、あまり剃れそうにないと言われ、剃れぬものがあるか、なんでも剃ってみせると受け合った。そんなら自分の陰毛を剃れというので、剃ってみせた。それから暫くは銭湯に入るときはタオルで前を隠さなくてはいけなくなった。未処理好きのくせに剃ってしまうとは情けなくこの時ばかりは自分を攻め立てた。 ある時卒業した学校の先輩から松山によい未処理系のソヲプランドがあると聞かされ、行く気にもなっていたのだが、あとあとそれが間違いであることがわかり、抗議に行ったのだがしきりに謝る先輩を前にするとそれも言いづらくなり、東京の某という土地ならある程度近いし、某に行きますと出任せに言ったが、未処理系のお店が某にあるかどうかは確証が持てなかった。だいたい未処理系のお店とはなんなのか、それすら曖昧であるが言い出しっぺが己れだと思うと何故か某には行かなければならぬと思った。 季節は真夏の頃で汽車で某につくと茹だる熱さに倒れそうになりながらもなんとかその遊廓にたどり着いた。どうやらマンシヨンの中に遊廓が入って商いをしているらしい。 昇降機で受付に行くと、法被を着た威勢のいい男達が声を張り上げお面のような張り付いた笑顔でおれを案内する。すぐ横に立っているのだから、大声を出されても困惑する。ソヲプランドと言うのは元来、淫靡で秘匿性の高いものだと思っていたが、店の中も店員もこれだけ明るいと電気小売店にでも来たような錯覚に陥る。 情報局割を使えるかと聞くとレインボウ割なら使えると言ってくるから要領を得ない。レインボウ割の方が局割より千円高いのだが、おれの胆力がなく仕方なくそちらが適応になった。次に馴染みの女はあるかと聞かれたがないと言っておいた。 おれは生まれつき度胸や胆力がない。今思えば初めての業態なので緊張感があったのと、この辺りからこの店の雰囲気に呑まれ始めて萎縮していたに違いない。 少し待つと言われたので、病院の待合室のようにソフアがいくつも並んでいる所に座った。人気のある店のようで、客が次から次へと出たり入ったりしているのは結構なことだ。 こんなものかとわかったような面を作り上げる頃にはおれの番号が呼ばれた。 昇降機で更に別の階に移動して扉が開くとそこには既に女が待っていて、その後ろには薄暗い廊下が続いている。 何処と無く品のある静かな娘で名前は貴代(きよ)と言った。 この娘はもともと由緒ある家柄風の澪落した風であるような気がするから、ついには奉公までするようになったかもしれない。だから、貴代はアラサアである。 貴代は小柄で美人な女で俺の顔を見上げると優しい笑顔を作りよろしくと言ったり、今日はどうなどと言って手を繋ないできた。繋いだ手の肉は薄く全体にも華奢である。何処か寂しそうな笑顔は貴代の心の中に貴代がいて、そこからはどうも出てくる感じはしないそんな印象を持った。 部屋の中に案内された。存外ソヲプランドとはこのようなものなのかと少し拍子抜けした。勝手にデイズニランドのような西洋風で夢の世界を写し描いた煌びやかなものだと思っていたら違った。 6畳ほどのスペイスにベツドとドレツサ、その奥の窓際のスペイスに風呂が置いてあった。部屋の中は亜細亜の行楽地を模しており、薄暗い照明と湿った雰囲気が相まって子供の頃に読んだ、主人公が魔法のかかった部屋から出られないという物悲しい絵本の一場面を思い出していくぶんか気分が滅入った。 そこからは服を脱がされ湯船に浸かり体を洗われスケベ椅子なるものにも座らされまた湯船に浸かって体を拭われた。その間に貴代の唇を吸い舌と舌を絡め小さな胸を揉みおれ自身を咥えられたり泡で洗われたりして忙しい。 貴代は始終優しいが、奥まった笑顔と其れっぽい柔らかい物腰でおれと己との関係性を無難なものに仕上げていった。 おれも人見知りな質だからこういった距離感の作り方はこちらも専売であり、貴代がどういった心持ちなのかはすぐにわかる。そう思うと貴代の健気な頑張りを褒めたい気持ちと、どうしても心の中に留まり続ける貴代に触れられない寂しさがあった。だからなのか、この部屋に入った時に連想した、もの悲しい絵本の主人公は貴代なのかもしれないとこの時思った。そうでなければその絵本の主人公はおれである。 そういった拠り所のない心持ちでいると、本厚木のサロンにいるおれが懇意にしているの玄人女を思い出した。潔よく気性の良い女でやはり名前は清(きよ)といった。今は清がいやに懐かしい。神奈川に帰ったら清のところに行ってやろう。 体をバスタオルで拭かれ、ベツドに横になった。何か一言二言会話を交わした気もするが、今は貴代の舌がおれの舌にヨレヨレと触れてお互いの唾液をなすり付けている。 貴代は玄人女にはしては珍しく舌先に力を入れて、硬度を保ったまま他人の舌先をやる。これはあまり興奮もしないし女の柔らかな体という資産の損失でもあるから感心はしなかった。 そのままおれの乳首やそこかしこを吸ったり舐めたりしたが、それはそれで気持ち良いという程度の気持ちよさである。 おれは攻め好きでもあるから貴代に攻守の交代を申し出た。 貴代の体は白く行き届いた手入れのおかげか白粉のかかった饅頭のような綺麗な肌をしている。おれは接吻やら首筋やらを丹念にせめて、仰向けになると殆ど盛り上がりのない乳房を舐めたが、貴代はあまり好きではないらしく、はぐらかされ下の方に移る事にした。大人しいようで自分の事はしっかり守る女は好きであるが、客である立場からすると寂しいものだ。 おれは胸を諦め貴代の一番大事な部分に対面することにした。未処理好きと普段から豪語し、未処理に関しては三度の飯より好きなおれが、未処理の店があると聞きつけ、汽車を乗り継ぎ乗り継ぎやって来てついにはその遊郭の女を前にしているが、どうやらその噂は間違いだったようだ。 貴代の下の毛は綺麗に処理されており、綺麗と言っても鳥の肉のようにぶつぶつはあるが、下の毛はどう見てもなかった。おれは趣向の結晶を求めてわざわざ東京の外れまでやってきた事を後悔した。 しかし、これは誰を攻められるだろうか。攻められる人間がいるとしたら、根も葉もない噂話を簡単に信じてしまったおれに決まっている。おれがこの事の結果をおれ自身に詫びなければならない。昔学生時代に親戚からもらったら髭剃りで、下の毛を剃ってしまった馬鹿なおれは結局馬鹿なままなのだ。 その無毛の割れ目を空しく攻めたがそれが伝わったのか貴代もそろりと体液を流すにとどまった。 時間も迫っているので貴代が器用にサツクを被せてくれて正常位であれを試みる。しかしあれにあれした感じがなくおれは少し狼狽えた。 そしておれ自身のものを見てみると、さっきまでなんとかみなぎっていた生気は失せ、追われた川魚のように縮こまっている。貴代が咥えたりして何度か生気を取り戻そうと試みたが無駄なことだった。 そのまま時間が終わって、おれは折角ソヲプランドに来たのに本懐を遂げない不甲斐のない結果になってしまった。そしてまた本厚木にいる清の事を思い出して切なくなりどうしようも会いたくなった。「ぼーちゃんは、御気性もよく立派なものもお持ちです」といった清の真っ直ぐこちらを見る目が嫌に懐かしい。 思うに今目の前にいる貴代は綺麗で接客も悪くない。しかしおれに肌身を擦り寄せたり、心を擦り寄せたりすることはなかった。それが元来人見知りの俺には大きく響いてしまったのだろう。それに比べて本厚木の清は初めて会った時から一切の壁のようようなものを感じさせず、おれはすこぶる感嘆したものだった。 そう思うとソヲプランドであろうがサロンであろうが心の壁を感じさせない接客というのがおれに取って一番大事なことで業態は関係ないのだと気付かされた。 とは言え貴代は悪い事はない。随分と頑張ってくれた。 最後に体を洗われ服を着させてもらった。その折りに名刺をくれといったら、困った顔をして、こう言い出した。私はあと三日でここを辞めるから名刺を渡しても割引も効かない、それでもいいのなら書きますと。おれは名刺を集める質だからもらう事にした。 もっと話を聞くとこの商売から足を洗うのだと言う。貴代はどうやらこの魔法のかかった部屋から出ていく術を見つけたようだ。おれはなんだか貴代がいとおしくなり、貴代の行く末が幸せになるように言ってやったら、素直に喜んでくれた。 だから貴代のネイムプレイトは風の国にはない。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき 旧友の子規君に今回の体験談を見せたらこれはポイントが付かんよ。という事で大いに笑われこちらに書くことにした。笑われた事には閉口したが、子規君はどうして見所のある人物である。 口コミ体験談を見ると被ボディーブローなる者が未体験の業態に対して投稿を重ねているのをみて、余もそれにあやかった。今回ソヲプランドへの登樓は初めての試みで随分と戸惑うことが多かったが貴代と清の幸福を祈念する意味も込めて書いた。 これは余が東京に赴任した時の経験をベイスに、筆を取ったものであるが、あとの事は子規君に任せてある。 著者 被目漱石(かぶりめそうせき) 平成も終わりを迎えようという頃、文筆活動を行うも陽の目は見ずに行方知れずになった作家。 その他の著書 『我輩も猫である』 『小宮三四郎』 『え~っと、それから』 | |
この風俗コラムへの応援コメント(19件中、最新3件)
- カピ45(416)2019/9/18>>被ボディーブロー(135)の『episode56.5「ぼーちゃん風の国へ」』のコラム改めて読みなおしました!ソープデビュー、松山だったのですね。そのリスペクトで漱石先生の「坊ちゃん」風の書き出し!(^^;)
実は松山中学よりもはるかに熊本五高の方の在勤が長かったのですし、地元の悪口ばかり書いているのに松山ではナゼあれまでに「坊ちゃん」をまつり立てるかが不思議です(笑)
初のソープ、何かと思うにまかせなかった部分もあったかと思いますが、格安店にもホスピタリティあふれる良嬢は必ずいますので、是非ソープで「大満足した」という体験談を書いていただきたいです。あっ、なんでしたら聞いて下さい(笑)